昨晩は、叩きつけるような大雨が降った。
この島は本当によく雨が降る。
奄美大島の日照時間が日本一短いとされているのは、そういった理由かららしい。
さて、今日はYが心待ちにしていた「マングローブ・カヌー体験」の日。
昨日のうちに申し込みを済ませてあり、多少の雨なら決行とのこと。
朝から雨が降ったり止んだりだが、カヌーに乗れば多少なりとも濡れるのだから、大したことない。
道の駅には「マングローブパーク」が隣接しており、5分ほど公園を歩いたところに船着場がある。
小雨の中、公園の小径を進んでゆくと、すでに参加者の皆さんは勢揃いしていた。
まず初めに、ライフジャケットの上に雨具を着て、最初に、簡単なオールの使い方を教えてもらう。
2人乗りの場合、男女ペアなら男性が後ろに座るのが一般的。
オール操作で水が跳ねるので、膝にはビニールシートをかぶせる。
我々を含め2人乗りカヌーが3台。
それにインストラクターの男性が一名。
合わせて4台のカヌーが、揃って川の中へと漕ぎ出して行く。
今日の満潮は13時過ぎ。
スタートした10時過ぎは、どちらかと言えば満潮に近い水位だという。
昨日の大雨で、川の流れは若干速いとのこと。
全員カヌーは初めて。
行きは流れに沿うので、放っておいても前に進むが、方向が左右に定まりにくい。
どのカヌーも、あちらこちら川岸にぶつかりながらも、なんとか指定された方向へと進んで行く。
KY夫婦は、一番ラストに乗船したので出発も遅れる。
操作に手間取っていると、かなり出遅れてしまう。
前方でインストラクターが解説する声がよく聞きとれず。
しばらく進むと、分岐点に差し掛かり、右に遡上する。
「左に行くと太平洋です。太平洋を横断したい方は、左に行ってくださーい。」
左に入りかけていた先頭のカヌーが、慌てて踵を返す。
一堂に笑いが起こる。
満々と水を湛えているように見えるが、左右ところどころ浅瀬があるので、乗り上げないように注意が必要だ。
マングローブの根元に突っ込んでしまっても、オールで突いたりはせず、手で押し返すようにする。
マングローブがトンネルになっているところで停留して記念撮影。
マングローブの生態についての説明を受ける。
そもそも、マングローブというのは樹木の名前ではなく、汽水環境に生える樹木の総称らしい。
これらはオヒルギとメヒルギという2種類の樹木で、汽水中の塩分を幹の中で濾過したり、葉に塩分を吸わせて落とすことで、個体内の塩分を排出するメカニズムを持っているという。
古来、これらの樹木はもっと内陸に生えていた。
彼らはそこでの生存競争に敗れ、徐々に水辺へと追いやられてきた、いわば樹木の負け組とのこと。
そして、海水と淡水が混ざり合う汽水の環境に適応するようになり、今に至っている訳だ。
マングローブの生態系に果たす役割としては、波による砂泥の侵食の防止、動物の生育環境の形成、川の泥が直接海に流れるのを防止する浄化作用、CO2吸収による地球温暖化防止の作用などがあるらしい。
マングローブの森はプランクトンが豊富で、カニや小魚が集まってくる。
白いサギのような鳥がマングローブの根元で何かを啄ばんでいる。
何とか写真に収めようとしたが、影に隠れてしまい上手くいかなかった。
帰りは流れを遡上するので、少々力を入れて漕がないといけない。
少しずつ操作に慣れてきて、Yがオールを漕ぎ、方向調整をKがやるようにすると、操作がスムーズだという事が分かってきた。
何事も、創意工夫。連携プレーが第一のKY夫婦。
わかりやすく言えば、Yが汗をかき、Kが舵をとる、という構図か。 ( T_T)\(^-^ )
目線が水面とほぼ同じ高さというのは、マングローブの森に自分が溶け込んでいる気にさせる。
天気が良ければ、さらに気持ちがいいんだろうな、と思いつつ、
雨に打たれながらも、ずっとこのまま漕いでいたい気がした。
行程は1時間ちょっと。
奄美に来たら絶対にトライすべき体験イベントである。
次回、一人乗りにもチャレンジしてみたいと思うKYであった。
⭐️おすすめの道の駅認定⭐️ 道の駅「奄美大島住用」
道の駅のレストランで奄美名物「鶏飯」を食べ、
「黒糖焼酎のアイス」を購入して、しばし休憩。
今日は、この後、夜9時20分のフェリーで鹿児島へと向かう予定である。
午後3時ごろ、お世話になった道の駅をあとにし、近くのスタンドで給油(65L)と洗車をする。
車が泥水を跳ね上げるたびに、そろそろ洗車をしようと思うのだが、
なぜかその後すぐに土砂降りの雨が降る。
そんなことを繰り返しているうちに、なかなか海の塩を流せずにきてしまった。
いくら防錆加工を施したからとはいえ、ずっと心配だった。
田舎のガソリンスタンドにはコイン洗車の機械がない。
どうしたものかと店員さんに尋ねてみると、セルフなら洗車機を無料で使用できるという。
それではと、有り難く下回りを中心に洗車させていただき、タダはあまりにも申し訳ないので、ほんの気持ちだけ、コインを店員さんにお渡しする。
車は、そのまま名瀬港方向へと向かう。
フェリーの出発まで、まだまだ時間があるので、先日見学できなかった「奄美博物館」を見学することにする。
エントランス前の芝生では、親子連れがビニールシートを敷いて弁当を食べている。
サッカーに興じる子供達の間をすり抜けて、博物館に入る。
入館すると、広くはない1階ホールに巨大な木造船の模型がある。
スブネ(丸木舟)・イタツケ(板を張り合わせた船)が並ぶ真上には、
さらに大きい20人乗りのクバヤがぶら下がっている。
奄美地方の大きな地形図も展示されているが、何度見ても入り組んだ複雑な形をしている島だ。
これは、伊能忠敬の日本地図より前の時代に完成したということになるが、結構精密に描けている。
この島は、平地がほとんどないが、漁業、特に真珠やエビなどの養殖には適しているのだろう。
2階は人文・歴史コーナー。
「奄美のシマウタの特徴」というパネルで、「奄美では全ての参加者が唄い手であり、聞き手である」というくだりが気に入った。
昔は即興で歌詞を作って唄いあったようだが、最近では村に蓄積されたフレーズを、その場の気分で組み合わせて唄うことが多いようだ。
奄美地方は琉球文化の影響を多く受けるので、類似の祭祀文化がある。女性たちが集まって神酒(ミキ)を作り、祭祀を行う様子を表すジオラマ展示があった。
なんだか、見ているだけで楽しそう。
高倉の模型は、琉球村で見たものよりも高いように思える。
奄美の伝統産業としては、漁業、サトウキビ栽培と製糖業、大島紬や芭蕉布の製造や、サトウキビやソテツを用いた焼酎の製造などがある。
このあたりの展示は、沖縄で見た展示と類似したものが多い。
奄美地方の文化として特筆すべきは、相撲である。
相撲に関する展示が、これほどある博物館も珍しいのではなかろうか。
奄美では、江戸時代から琉球相撲や薩摩の文化の影響を受け、相撲が盛んに行われた。
1920年に大島相撲協会が設立されてから、アマチュアスポーツとして大きく発展した。
現在でも「豊年相撲」として、各集落で相撲大会が開催されている。
たしかに、奄美では、至る所で土俵を見かけた。
加計呂麻島でも、小さな集落に土俵が手入れの行き届いた状態で保存されていたので驚いたばかりであった。
神事とはいえ、スポーツ。
これほどまでに愛され続けている国民的スポーツ、相撲。
大事に守ってゆきたいものである。
さて、芸能、文化のコーナーの見学を終えた一行は、3階へと進む。
このフロアーは、奄美の自然コーナー。
奄美の魅力といえば、それは間違いなく「圧倒的な自然」だろう。
この展示を見ると、誰でもそう感じるはずだ。
魚や貝、鳥、昆虫の標本の数がものすごい。
これだけの標本を一度に見た記憶があまりない。
ほとんど、大英博物館レベルと言ったら言い過ぎか。
こんなに姿かたちも様々な生物が、我々の身近なところにひっそりと生息しているのだなあ、と当たり前のことを改めて気づかせてくれるのが、こうした展示の素晴らしいところだ。
奄美の森には夜行性の動物たちが沢山いる。
「24時間眠らない島、奄美」というキャッチコピーに、なるほどと納得させられる。
奄美地方で有名な真珠の養殖「マベ真珠」についての展示もある。
マングローブの森で始まり、奄美の自然の展示で終わった一日だった。
夜、早めの夕食を食べ、7時前に名瀬港フェリーターミナルへと到着する。
このターミナルは表示がなく、駐車位置や乗船位置が分かりづらいのが難点。
奄美からのフェリーは、今までになくコンテナの搬入が多く、随分と待たされる。
フェリーが到着すると、まるで巣に出入りする働きアリのように、フォークリフトが行き交う。
じゃがいもなどの農産物が収穫期にあるからだろうか。
小一時間ほど待って、我々キャンピングカー隊は、一番最後の乗船となる。
このサイズの、このいかにもキャンピングカーという形の車は、なぜか他の車と差別化されてしまうようだ。
実際には、この車の規格より、ずっと大きなサイズのバンコンもある。
しかし、傍目からは、それがキャンピングカー仕様であるのかどうかは見分けがつかない。
今ひとつ、そのあたりの事情が、担当者の見立てによって変わるので、なんたか腑に落ちない。
結局、最後に乗り込んだ我々は、30分以上前に入船を済ませた人たちが陣取ったおこぼれのスペースを見つけ、なんとか寝場所を確保。
21時45分、定時より少し遅れての出港となった。
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