2月4日 沖縄の鬼退治伝説とムーチー



節分といえば、日本全国で「鬼退治」が繰り広げられる日。

それは、ここ沖縄においても例外ではない。

多少日にちは先行するが、季節の分かれ目であるこの時期に、鬼退治が行われる。

ただ、一つだけ違っていたのは、沖縄で鬼を退治するのは女性。

使う道具は「餅」。その名も「ムーチー 」

これで、鬼を退治するのだ〜‼︎




「ムーチー」とは、「餅(もち)」の沖縄方言で、サンニン(月桃)の葉で巻いた、沖縄伝統の餅菓子のこと。紅芋味の他に、白糖、黒糖、ココア味もあるらしい。


「ムーチー 」は、「鬼餅」とも書き、沖縄各地に鬼退治伝説がある。

ここでは、その一つをご紹介。

昔、あるところに妹と兄がいた。二人は仲良く暮らしていたが、妹が嫁いだ後、いつからか兄は夜な夜な村を襲いにわとりや山羊、牛を盗み、時には人間までも食べる「大里鬼」になって、洞窟に住みついているという噂が広まった。    

 妹は事実かどうか確かめようと思い、大里の洞窟に行くと、兄は留守のようだった。

そこで、妹は洞窟の中に入っていくと、思わず鼻をつく悪臭がプンプンし、牛や山羊の骨が散乱しており、妹は噂通り兄が鬼となって村の牛や山羊を襲い、食べていると悟り、怖くなって帰ろうと外へ出た所に、鬼となった兄が帰ってきた。

見ると、兄は筋肉隆々で、口は裂け牙がむき出し目は爛々と輝き、赤黒い毛に覆われた鬼の姿になっていた。

妹は反射的に逃げようとしたが、「妹か、何故逃げるのだ。一緒に肉でも食べよう」と鬼となった兄に襟元を捕まえられ、洞窟の中のほうへ引っ張られた。

妹はとっさに「用を足したい」と嘘をつき、その隙をついて逃げ出した。

数日して鬼は、今日は恨みをはらし食べてやろうと、妹の家へやってきた。

一方、妹の方は、鬼を退治しようと考え、自分の餅は普通の餅を、鬼の兄に食べさせるには鉄を入れ、どんな鬼でも食べられないような鉄餅を準備して待っていた。  

妹は、「先日のお詫びにおいしい餅を作ったので、いっしょに外の景色を見ながら食べよう」と、
鬼になった兄を言葉巧みに誘い出し、崖の近くまでおびき寄せて、「どうぞ召し上がれ」と、鉄餅を差し出した。そして、妹はとてもおいしそうに自分の餅を食べてみせた。

一方、鉄餅を口に入れた鬼は餅が噛み切れないで困っていた。

鬼になった自分でも噛み切れない餅を、妹がおいしそうに食べているのを見て、鬼は妹の口の頑丈さにびっくりしていた。

その時、妹の着物の裾がはだけ、着物の中にホー(陰部)を見つけた鬼は、いぶかしく思い、「お前の下の口は一体なんだ?」と尋ねた。

すると、妹は機転をきかし、「上の口は餅を食べる口。下の口は鬼をかみ殺す口」と言ったかと思うと、妹は着物をまくりあげて、下をあからさまにして鬼である兄に迫った。

びっくりした鬼は、ふいをつかれて飛び上がるやいなや、足を踏み外して崖下に転落してしまい、死んでしまった。

『日刊OkiMag』掲載ー「沖縄の民話」より抜粋


沖縄では、この鬼を退治した旧暦の12月8日を厄払いの日とし、「鬼餅(ウニムーチー)」を作って仏壇などに供え、家族の健康や長寿を願って食べるようになった。

さらに、子供の生まれた家庭では子供の健康を願り、例年より大きな「力餅(チカラムーチー)」を作って食べるという。



中は、こんな感じで、粘り気のある外郎(ういろう)という表現がピッタリ。


そいうえば、昨年末に沖縄に来てから、道の駅やスーパーで、このムーチー作りに必要なサンニンの葉や、ムーチーの餅粉を見かけることが多かった。


基本的には、ムーチーは各家庭で手作りするものらしい。

ムーチーの作り方は、こんな感じ。

図説/『琉球新報』(2016.1.17付)


以外にカンタンそう⁉︎  これなら、ひとつトライしてみたいものだ。


▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽


さて、話は節分の鬼退治に戻るが、沖縄にも神社が19社あり、当然、豆まきも行われている。

昨日2月3日、琉球八社の「波上宮(琉球国新一の宮に認定)」では節分祭が開催された。

ここでは、神殿でお祓いの神事が行われた後、獅子舞が登場し、厄払いをしたあとで、参拝客の方を周り、その後、神主さんと年男、年女が境内に現れ、豆をまきをする。

獅子舞が出てくるあたりが、いかにも「チャンプルー文化」の沖縄らしい。



そして、さらに本土の影響で、また一つ節分の行事が増えつつある⁈

それは、今年も悪しき慣習として問題となった「恵方巻」のこと。


ローソンやファミリーマート、イオンなど、全国区の出店も多い沖縄だけに、恵方巻は本土同様、大々的に宣伝されている。

この文化が定着するのも、時間の問題なのだろう。


元々、商売繁盛と厄除けを祈願する大阪発祥の風習といわれる、この恵方巻。

KY夫婦は関東出身なので、まったくその存在を知らなかったが、2000年からしばらく中国で生活していて14年ほど経ってから東京に舞い戻ってきた時、節分の時期に恵方巻というものが大々的に売られていてビックリさせられたことを思い出す。


節分の夜に、恵方(今年の方角は東北東)に向かって願い事を思い浮かべながら丸かじりし、言葉を発せずに最後まで一気に食べきると願い事が叶うとされる。


今年、いったいどれくらいのウチナーンチュが恵方巻を口にしたのだろう。

気になるところである。




キャンピングカーで日本一周

キャンピングカーで日本一周の旅に出ています。夫婦二人、各地の歴史や文化、暮らし方を学びながら旅しています。

0コメント

  • 1000 / 1000