今日は旧暦のお正月、元旦である。
沖縄では、現在、ほとんどの家が新暦で正月を祝うそうだが、うみんちゅ(海人)の町、糸満漁港では旧正月を祝い、港中の漁船が色鮮やかで見事な大漁旗を掲げ、その年の大漁を祈願するという。
その光景を一度見てみたいと思い、早朝、車を走らせ港を覗いてみることにした。
糸満漁港は、日本最南端、かつ最西端にある漁港である。
県内唯一の第三種指定漁港として、県内の漁船のみならず県外の漁船も受け入れており、主に水揚げされるのは、マグロやイカ、カジキ、シーラなど。
中でも、セーイカ(和名はソデイカ。食用イカの中では最大級のイカで、体長1メートル、体重は20キロにも達する)は、漁獲量日本一を誇るという。
(沖縄観光情報「沖縄CLIP」より転載)
港には、たくさんの漁船が停泊しており、最上段に日の丸の国旗を掲げ、大漁旗などカラフルな旗をはためかせている。
漁港には、船こそあれど、漁民やおかみさん達の姿は見えず。
只々、観光客とおぼしき人々が船を見上げてシャッターを切るのみ。
この時分、糸満漁港の方々はいったい何をしているのかと気になり、ネットで検索してみる。
すると、沖縄タイムス(2018.1.28付)で、糸満市民の宇那志(うなし)門中の運営委員長、宮城英雄さんが、旧正月三が日の行事について語っていた。
※ 門中(ムンチュー)とは、始祖を同じくする父系の血縁集団のこと。
(以下、抜粋)
旧暦1月1日。
宮城さんの家では、仏壇、台所の「ヒヌカン」、床の間に、魚の天ぷらや「タントクブ」(昆布で巻いた炭)、料理や飾り物5品と「アカカビ」と呼ぶ赤、白、黄色の紙を供える。
午前8時ごろから境内の拝所4カ所を回る。
「20、30人が順に拝み、昔は昼まで参拝客が切れなかった。約20年前まで拝んだ義母は、1カ所当たり約20分、お祈りの言葉を唱えた。今は全部で30分ほどで終わる」。
「男は何もしない。女性の仕事」。
2日目からは、男性の出番だ。
背広姿でムートゥヤー(門中の本家)などを回る「ニントゥー(年頭)」。
本家では午前中から、女性役員「アタイ(当番)」総出で料理を作り、昼すぎからの男性客来訪に備える。
「近年は50~60代を中心に30~40人は集まる。30~40代のニーセーター(青年)も増えてきた」。
2016年から行事のあり方を直し、結婚、出産祝いを渡すようになると、若い世代も参加しやすくなったという。
仏壇の先祖を拝み、会食しながら懇親する。
この時、宇那志門中では、門中の年会費「ヌキチン」を持参する人もいる。
内訳は、1世帯ごとの「キブイ(かまどの煙)」が基本。
さらに、家族の人数分を集める「ウマリ(生まれ)」を徴収、18~65歳の就労世代分を上乗せする「ウサカティ(御酒代)」などがあり、祭祀や門中墓を修繕する費用に充てられる。
正月に「ヌキチン」を集める慣習は、「遠洋漁業や出稼ぎからも多くの人々が里帰りする時期。集金しやすかったためでは」と考える。
1月3日。
門中のペークー(書記・会計)らが古くからゆかりのある市真栄里、大里の旧家を拝んで回る。
家々で4日以降の初出漁「ハチウミ」。
5日は1年の息災をヒヌカンなどに祈り始める「ハチウンヌキ(初拝み)」などがある。
7日のナンカヌスクー(七日節句)には、正月飾りを下げる「スクノーシ(節句直し)」がある。
英雄さんは昔同様、正月を旧暦で祝う糸満の人の心を「命懸けで船に乗った漁師の町。信心があつく、習慣を変えることに抵抗が大きかったと思う」と読み解いた。
とある。
ということは、漁民の方々は、それぞれの門中ごとに旧正月の行事を催されているのだろう。
このぐらいの時間帯は、女性たちが拝所巡りをされている頃だろうか。
ひと通り写真を撮り終えるたところで、近くに地元ラジオ局の取材クルーが観光客に声をかけていることに気づく。
おおっと、これはどこかで聞いた内容と同じ。
「これから生番組が始まるんですが、お時間ありますか? おありでしたら、少しお話を伺ってもいいですか?」
近くにいる方が、あっさりと時間を理由にお断り。
このままいけば、次はどうみても至近距離でカメラ(スマホだけど)を構え、そのそばに停まっている何処だかわからない地方ナンバーのキャンピングカー夫婦の番。
さすがに二度ラジオ番組に参加するのも、ミーハーな出たがりのようで恥ずかしい。
ということで、示し合わせたわけでもなく、スタコラサッサと退散する。
かくして、糸満漁港の旧正月風景は漁船を写したという記録を残しただけ。
それではあまりに味気ない。
何かないものかと再びネットで検索すると、「沖縄には3回正月がある」という記事を発見‼︎
「琉球新報Style」の情報によると、沖縄には新暦、旧暦に加え、もう一つの正月があるという。
一つ目は、本土と同じ新暦の正月で、大みそかに沖縄そば(ソーキそば)の年越しそばを食べ、
年が明けると各家庭には年賀状が届き、子どもたちにお年玉をあげ、神社などへ初詣に行くという。
正月のメイン料理は豚肉料理で、豚の内臓の入った中味汁や、
白みその具沢山の味噌汁「イナムドゥチ」、
豚の角煮「ラフテー」などが食卓に並ぶという。
二つ目は今日で、旧暦の正月。
お祝いの定番は、昆布の炒め煮「クーブイリチー」や、
豚肉のごぼう巻き「グンボーマチ」。
そして問題の三つ目は、旧暦1月16日。あの世の正月「十六日祭(ジュウルクニチー)」。
今年は2月20日にあたる。
ジュウルクニチーが盛んなのは宮古島地方や八重山地方で、お墓の前に親戚が集まり、豚肉料理やかまぼこ、豆腐などを詰めた重箱を備え、先祖供養をするという。
これは、宮古島地方や八重山地方では最も大きな行事。
沖縄本島に住む宮古、八重山出身者は那覇市の三重城で、それぞれの出身離島に向かって供え物を並べ、先祖へ祈りをささげるという。
どおりで、石垣、宮古方面への飛行機が翌21日から安くなるわけである。
「十六日祭」については、こんな記事も見つけたのでご紹介。
おの大きなお墓は、先祖と酒を酌み交わすために必要不可欠。
どうりで立派な建物なわけだと、しみじみと納得するKY夫婦であった。
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