11月15日 富士川町→甲府市[山梨県立美術館・山梨県立文学館]→富士川町(35km)


今日は一日芸術と文学の日。

甲府市内にある「芸術の森公園」へと向かう。
広い敷地内には、向かい合うように山梨県立美術館山梨県立文学館が配置されている。


2つの会館の常設展は、セットで670円なので、なかなかお得である。


周辺には様々なアート作品が置かれ、全体が「芸術の森公園」として整備。




快晴の下、山頂付近を新雪で覆われた富士山が、絵葉書のように鮮明に、まるで手に取れるように望まれる。



山梨県立美術館では、現在ミレーの作品を70点収集しており、そのうち油彩画は12点ある。これは世界的にも大変多いらしく、「ミレーの美術館」として広く知られている。



基本的に企画展は割愛する方針の我々としては、常設展の料金でミレーのような巨匠の絵画が鑑賞できるのは有難い。


まずは、ミレーの油彩画12点を鑑賞。
(パンフレットより複写)

収穫した麦をフォークで高く積み上げる光景をバックに3人の農婦が落ち穂を拾う「落ち穂拾い、夏」。当時は貧しい農民のため、わざと落ち穂として畑に残していたらしく、その風習を知った画家・ミレーを大いに驚かせたとのこと。 


農婦が撒く餌に群がる仲間に遅れじと、駆け寄ってくる一羽の鶏の慌てた様子が眼に浮かぶ「鶏に餌をやる女」


有名な「種をまく人」はX線で調査すると、男の左後ろに大きな水車が浮き出て見えるらしい。ミレーは使い古しのカンバスに、あらたにこの名画を描いたわけだ。


羊の群れの白い背中に夕陽が当たって暖かそうだが、コートを胸の前で合わせる羊飼いは寒そうに見える「夕暮れに羊を連れ帰る羊飼い」


「角笛を吹く牛飼い」は、今年あらたに収集されたミレーの油彩画だ。


それ以外に、ミレーのパステル画も数点ある。「ヴォージュ山中の牧場風景」は、伸びやかなパステルのタッチが暖かな印象を与え、一番惹かれた作品。


「風景画の系譜」のコーナーでは、17世紀から19世紀にかけての、写実主義や印象派の風景画が18点展示されている。

Yは、雲間から射し込む月光が運河の水面に映え、教会の尖塔をはじめ風景全体が傾いでいる幻想的な作品、「ドルトレヒトの月明かり」が気に入り、

Kは、羊の描写がリアルな「森の中の羊の群れ」(シャルル=エミール・ジャック)が一番好きと言う。


このほか、山梨ゆかりの作家を中心にした日本画・墨画・水彩画・版画のコーナーがある。北アルプスの名峰の雄大さと雲の動きを最小限の色彩で描き出した木版画、「八峰より見たる鹿島槍」(伊藤孝之)に惹かれた。

「名作劇場:版画の中の版画」として、ゴヤのエッチングによる版画「闘牛技」33点も展示されている。ゴヤはどれだけ闘牛が好きなんだ‼︎  と呆れるKY夫婦。


最後に甲府出身の木版画家・萩原英雄の記念室を見て、常設展は終わり。




向かいの山梨県立文学館に移動する。




カフェで、コーヒーと「信玄餅ロールケーキ」で一息入れてから、こちらも常設展のみを見学。





常設展では、「山梨の文学風土」、「山梨出身・ゆかりの作家と作品」、「芥川龍之介」、「飯田蛇笏・飯田龍太記念室」などのコーナーが設けられていた。


山梨出身の文学者というと、『楢山節考』の深沢七郎、『樅の木は残った』の山本周五郎、『火宅の人』の檀一雄、『由煕』の李良枝や俳人・飯田蛇笏、翻訳家の村岡花子(花子とアン)をはじめとして数多い。

現在活躍中の作家としては、林真理子や保坂和志なども山梨出身だ。

そして、そのほか山梨にゆかりのある作家としては、『たけくらべ』の樋口一葉は両親が山梨出身であり、芥川龍之介は山梨を旅行し、講演も行なっている。中里介山の未完の大作『大菩薩峠』は、甲府と江戸を主な舞台に物語が展開する。



太宰治は二度目の結婚をきっかけに、甲府に移り住んでいる。
新婚生活を送った9ヶ月ほどの甲府での日々は、彼を精神的にも安定させ、生涯で最も明るく充実した時を過ごし、この時から『女生徒』『富嶽百景』『駆け込み訴へ』『走れメロス』などの優れた短編を、続々と世に送り出し始めている。
その後、東京三鷹へと転居したが、東京の空襲で家を失った後、ふたたび甲府へ戻り、夫人の実家で甲府が空襲で焼けるまでの3ヶ月間を過ごしている。


芥川龍之介と山梨との関わりは、わずか5日間の滞在と、それほど大きい訳ではないと思うが、大作家ということで、彼の手紙や俳句、書画などが多数展示されており、常設展の目玉の一つとなっている。ちょうど高校生の集団が来ていたが、芥川のコーナーがやけに賑やかになっていた。

その一方で、太宰同様戦時中に山梨県内に疎開していた金子光晴は「山梨出身・ゆかりの作家と作品」の華やかな展示室から閉め出され、別室の小さな個室に追いやられていた。

この地で召集令状受け取った息子の兵役逃れの為に、水風呂に入れて肺炎を発症させたりして医者に診断書を書かせた事がネット上で論じられているが、こうしたことが影響しているのだろうか、と勘ぐってみたくなるような扱いであると感じたのは、KY夫婦だけだろうか。


Yは、山梨出身の俳人・飯田蛇笏の俳句

おりとりて はらりとおもき すすきかな

などが琴線に触れたといい、


Kは、太宰が甲府疎開中に空襲に遭い、そのことを『薄明』という短編小説に描いていたことを知り、早速 無料アプリ「青空文庫」でダウンロードをして読み耽る。


こういった場所を訪ねる度に、毎回新たな発見があって、楽しい。


キャンピングカーで日本一周

キャンピングカーで日本一周の旅に出ています。夫婦二人、各地の歴史や文化、暮らし方を学びながら旅しています。

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