8月21日 大館 市内観光(34km)

連日の晴天である。今日は午後に伝統工芸品「曲げわっぱ体験」のイベントがあるので、それまでは大館市内を観光することに。

道の駅から5kmほどの温泉寺に行く。
ここには『自然真営道』を書いた安藤昌益の墓がある。
豪農の出身で、八戸で医師として活動した彼は、1753年に『自然真営道』を書き、農本主義による平等な社会の建設を訴えた。「万人自らの労働により生活すべし」という主張は、見方によっては社会的分業を排した窮屈な考え方である。だが、飢饉が続く江戸時代の東北農村において、ただの理想主義ではない切実さを含んでいた。そしてこの1753年は、「自然に還れ」と主張したルソーが『社会契約論』を著した年でもある。

当時の幕藩体制や階級制度を直接に批判する内容だから、昌益と弟子たちは、著作の扱いには細心の注意を払ったという。長く埋もれていたこの著作を150年後に掘り起こしたのが、同じ秋田出身の思想家・狩野亨吉だ。自己流の漢文で書かれたこの著作を初めて目にした狩野は、「この著者は狂人ではないか」と思ったくらい、当時としては破天荒な内容だった。時代を先取りし過ぎていた、ということだろう。
安藤家代々の墓の隣に小さな墓石があったが、墓碑銘が磨耗しており、よく読めなかった。

次に、以前テレビ番組「激レアさんを連れてきた」で紹介されていた映画館御成座を見に行く。
今日は夏休み中で上映はないのだが、館内を見せてもらうことに。『ひまわり』など懐かしい映画ポスターが貼られる館内には、黒光りする古めかしい映写機が置かれていた。

次に、郊外を少し走って、大館郷土博物館を見学。ここは、高校の校舎を再利用した建物。一部改装中で見られない展示もあったので今日は無料。
大館の伝統工芸品である、「曲げわっぱ」の展示コーナーが良かった。
これは、今日この後で訪問する大館工芸社の寄贈と寄付により展示されているもので、木目を生かした上品かつ独特なデザインと、実用性との融合が魅力的だ。 

他にも、ETのモデルとされるエイリアンのグレーにそっくりと、ネットで話題になっている土偶の展示もあった。

昼食を挟み、予定した時間に大館工芸社に行く。
「曲げわっぱ体験」は、料金の安い順に「皿・お盆・弁当箱」から選ぶのだが、ここは迷わず弁当箱にする。やはりフタがないと、実用品としての雰囲気が出ない、と Y。

工房に案内されると、作業台には 杉の材料がすでに曲げた形に加工され、輪っかになった状態のもの、フタ、底といったパーツに分かれた「曲げわっぱキット」が準備され、「さあ、組み立ててください」と言わんばかりに鎮座ましましているのである。 

「曲げわっぱがすでに曲がっていた」ことに驚き、二人で顔を見合わせる。

教えてくれる職人さんの説明では、今回の2時間ほどの作業時間では、曲げ加工を含めると時間が足りないので、ここまでは準備してある、とのこと。

材料を曲げて接着剤で固定し、さらに桜の皮で縫い付ける。乾かす時間も必要だ。そう考える仕方がないことなのだろうけど……。

これだと、ただの木製弁当箱作りになってません?

「プラモデルを作っているみたい」などと、率直なコメントが思わず口をつく。

KY夫婦、戸惑いながらも教わった通りに、接着ノリを丁寧に塗り、輪っかとフタ、輪っかと底とを張り合わせる作業をしていく。

我々に遅れて2組が新たに加わり、同様の説明を受けている。ちょうどその時間は甲子園の決勝戦で、地元秋田の金足農高が大阪桐蔭と熱戦の真っ最中。作業をしながらも、自然と周囲の会話が先制点を取られた秋田勢を気遣う話題になる。

接着ノリを塗って、隙間のないように材料をはめ込んでいく。はみ出したノリを刮ぎ取ってから、きれいに拭き取り、ヤスリがけをする。
3種類のヤスリで表面を滑らかに加工し、角を取って丸みを出していく。

これはこれでやり始めると結構難しく、真剣になってくる。2時間ほどかかってプラモデルも完成。なんとか形になっているように見える。

ホッと一息といったところで、職人さんから、「曲げもやってみますか?」と声を掛けられる。
待ってましたとばかりに頷く Y。80度のお湯で熱せられた杉の薄板を、手作業で曲げる工程を教えてもらう。
一応曲げることはできたが、きれいな円にするには熟練が必要なのだろう。木の性質から、折れずにキレイな曲げができるかどうかは、熟練者の職人さんでも実際に曲げてみなければ分からないらしい。この工程での成功率は6割程とのこと。

この工程を、今回のコースに組み込む困難さが、ようやく理解出来たKY夫婦でありました。貴重な体験をさせていただいたことに感謝、感謝。

今晩停泊するのは、昨日と同じ道の駅。我々より一足先に、トイレ入り口附近には千葉ナンバーの車が。持ち主は白髪の御老人。一人黙々とテントを張っている。建物の軒下には、既に洗濯物が吊るされ、その脇にはダンボールが2箱、チェアーが一つ置かれおり、パーソナルスペースが確立していた。

ここまでの道の駅ユーザーは初めて。ツワモノといえる。今晩は、この方がお隣さんとなる。(KY)

キャンピングカーで日本一周

キャンピングカーで日本一周の旅に出ています。夫婦二人、各地の歴史や文化、暮らし方を学びながら旅しています。

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