8月17日 遠野市→紫波町(83km)

道の駅「遠野 風の丘」には、駐車場脇に大きな風車がある。
昨晩は、引っ切り無しに大風が吹き荒れ、車高が高いキャンピングカーは揺れに揺れ、軽く船酔いになった感じ。なんとか沈没? 転倒せず、朝を迎えて安堵する。
しかし、あれだけ風が吹いていたというのに、この風車は微動だにせず。
「何か、おかしい」。そう思ったKは、すぐにネットで検索検索してみた。すると、岩手日報のこんな記事が……。

風車の「羽根」ポキリ 遠野・道の駅、強風原因か(岩手日報)
遠野市綾織町の道の駅遠野風の丘(菊池美之支配人)で21日、敷地内に1基設置されている風力発電設備の、風を受けて回転する部品「シリンダー」が5本全て途中で折れて落下した。強風の影響とみられらる。けが人はなかったが、近くに駐車していた軽乗用車1台が一部破損した。

 製造・設置を担当したメカロ(秋田県潟上市)によると、シリンダーはカーボンファイバー製で1本の長さが5メートル、重さは約40キロ。風車の中心の高さは12・5メートル。シリンダーはそれぞれ回転してエネルギーを生み出しながら、風車全体の「羽根」としての機能も果たすことで効率よく発電できることが特長とされていた。
 道の駅職員や買い物客の目撃証言から、同日午前10時半ごろからの約10分間に破損、落下したとみられる。同日の遠野市内は強風が吹き続き、風車内の測定器はこの時間帯に風速25メートルを観測。風速20メートル以上になると運転を自動停止する設定だった。
 メカロの柴田亨取締役は「今回のような壊れ方は例がなく、現状では説明ができない。早急に原因究明を進める」と語った。
下は、岩手日報に掲載されていた写真。棒の先が途中からボッキリ。
原因は究明されたのか、きちんと修復は出来たのか、定かではない。私に分かるのは、なんとか昨晩は折れずに済んだ、という事実だけ。
兎にも角にも、車を破損することなく、無事に朝が迎えられて良かった、良かった。

風車の一件を Yに伝え、ピンチを笑い話に変えられた事を心の内で喜びながら、K Yコンビは遠野市立博物館へと車を走らす。(K)

遠野市は、言わずと知れた『遠野物語』(柳田國男)のふるさとである。柳田は「日本民俗学の父」であり、この博物館は「日本初の民俗専門の博物館」として、昭和55年にオープンした。民俗学の記念館だから、昔の農機具や生活用具が展示されている程度のイメージ。前の夜に『遠野物語』を青空文庫で半分ほど読んでおく。
遠野は、盛岡・花巻と三陸沖を結ぶ中間点にあり、南部氏盛岡藩の宿場町、且つ、仙台藩との境に位置する防御上の拠点であった。釜石方面から海産物を一晩かけて馬で運び、それを盛岡・花巻という内陸部に運ぶ。米や日用品は内陸部から海側に運ばれる。遠野は流通の重要拠点であっただけでなく、豊富な森林や金鉱も有していた。寒冷な気候のため農業ではたびたび凶作に見舞われたが、運搬業や林業、金鉱採掘などでそれを補った。 

こうした独特の地理環境が生んだ風俗を紹介する施設として、この博物館は非常によく工夫されており楽しかった。昔の農機具などが展示されているのは当然として、それだけでなく、「遠野の昔話」を人形や水木しげるによるアニメで再現しており、素朴だけど人としての生き方を教わるような、自然や動物との共存が描かれる大人でも引き込まれる内容だった。

方言による語り口も印象的。
『遠野物語』に代表される遠野の昔話が、遠野の伝統的な生活スタイルと密接に関連していることは興味深い。例えば、馬仕事が多いこの地では、馬はとても大切にされる。昔々、ひとりの娘が飼っていた馬に恋をして結ばれるが、親に反対に会い、馬は殺され娘は天に登ってしまう。この「馬娘婚姻譚」、それにまつわるオシラ様信仰は現在まで続いている。
上の写真は、家の中に飾られているオシラ様。
興味深いのは「山男」の存在。遠野で盛んだった金鉱採掘のような山仕事は、平地の農民や町人とは全く異なる生活範囲を持つ集団を生む。『遠野物語』では、女子供が神隠しにあう例が多くあるが、これは遠野で語られる「山男」という神秘的な存在によるものだが、おそらく山仕事を行う集団と関係があるのでは、と自然と想像される。

また、早池峰山などの奥深い山々に囲まれるこの地は、日々の生活を占う修験者という集団も身近な存在である。

このように、ここ遠野が人間と自然・動物、神との間をとりもつ者が深く繋がりあってきた社会であることを実感できる展示となっており、満足度120%のKY一押しの博物館であった。(Y)

次に、一行は市郊外にある遠野ふるさと村へと向かう。
ここには、この地方の伝統家屋である「曲り家」構造の茅葺き民家が数軒移築されており、建物の中まで入って見学することができる。
「曲り家」では、建物の正面左側に厩がある。
建物中程では大きな釜で湯を沸かしていて、馬も暖かく過ごせそうだ。
建物の右側には、人が居住するスペースがある。
ここは、池あり、小川のせさらぎあり、田んぼあり、水車あり。豊かな自然に囲まれた、とても居心地の良い場所。

大河ドラマ「真田丸」や映画「蜩の記」ほか、多くの作品のロケ地となっている。

遠野の伝統文化と自然を満喫した二人。今晩は、遠野ICから釜石自動車道を経由して、東北自動車道に入り、久々に高速のサービスエリア「紫波SA」で宿泊することに。
この写真は、翌朝撮影したもの。
 Yは、ここの冷麺が食べたい一心で、このサービスエリアでの車中泊を押していた模様。曇り空で気温も低く、ちょっと気乗りがしないものの、地元の名物料理が頂けるチャンスなので、便乗することに。
麺はラーメンに近く、韓国の冷麺ほど酸味が強くなく、さっぱりした上品な味わい。テンションが上がり続けた今日一日の締めくくりに、持ってこいの夕食となったのでした。その後、車に戻った Yが、一人チビチビと盃を傾けたことは、言うまでもない。

 Yご機嫌の一日でした。(K)

キャンピングカーで日本一周

キャンピングカーで日本一周の旅に出ています。夫婦二人、各地の歴史や文化、暮らし方を学びながら旅しています。

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