早朝、駐車中のコンビニでコーヒーとサンドイッチを買う。
佐渡では、唯一の道の駅が規格外であったので宿泊を断念。公園の駐車場も真っ暗で物騒な感じであったので、コンビニさんの駐車場にお世話になることに。
そこで、コンビニさんの駐車場を利用させて頂く際の、我々のルールをご説明しておきたい。
ともかく、ご商売の邪魔をしてはいけないので、有り余るスペースを有するお店に限り、少し長めの休憩を取らせてもらうようにしている。
それでも、やはり内心後ろめたさはあるので、トイレ休憩を兼ね、数時間毎に店に入っては飲料や食品、生活必需品などを細かく購入してくる。
一度にまとめて済ませてはいけない。その都度、購入するのがミソである。
かくして、お客さんとして休憩タイムの延長に延長を重ねた体(カラダじゃなくて、体裁の方ね)で、一晩お世話になったコンビニを後にした一行。
国道350号線を南下し小木方面へと向かう。
途中、昭和レトロを更に超えたかと思わせるような、風情のある街並みが現れる。
ちょっとした山を越えるところで柿畑を目にする。「色よし味よし日本一・おけさ柿」というのぼりの文字が。
このあたりは柿の産地。中には一つひとつ袋に包まれ、大切に育てた高級品も。
しばらくすると、「たらい舟のり場」の看板が。海岸沿いの道を辿って、ようやく小木港に到着する。
すると、そこで久方ぶりに「芭蕉の句碑」が登場。
すぐ側に車を停めて、句碑とご対面。
荒波や 佐渡によこたふ 天の川
でも、はせを(芭蕉)さん。この歌を詠んだのはこの地ではなくて、対岸の出雲崎だそうで。
「佐渡が島は金を多く産出する、世の宝であり、ありがたい結構な島ではあるが、重罪者や朝敵のたぐいが島流しにされていることのために、ただ恐ろしい名で評判があるのも残念なことと思いながら窓を押し開けて旅の憂いを慰めようとしていると、日はすでに海に沈み、月はほの暗く、天の川が空の中ほどにかかり、星がきらきらと冴えわたり、沖の方からは波の音がしばしば響いてきて、胸が締め付けられるようで、断腸の思いがし、無性に悲しみが込み上げてくるのでなかなか寝付けず、墨染めの衣の袂は、なぜともなく涙でしぼるばかりでありました。
という、思いの詰まった句なのでありました。
場面は変わって小木港に。
たらい舟乗り場から見える港の海は、静かに少しだけ波立っている。
「2人乗りでお願いします」と伝え、慎重にたらい舟に乗り込む。
舟は頑丈な桶のヘリを滑り止め加工しており、楕円形である。
10分ほど船頭さんと話をしながらプカプカ浮かんでいると、のんびりした気分になってくる。船は、思ったより安定しており、水に落ちる不安は感じない。
船頭さんは皆女性。たらい舟はアワビやサザエなどを採るときに用いられるが、その場合はこうした港ではなく岩礁で操縦し、海には潜らず舟の上から採取するとのこと。最近では男性もこの漁に加わるようになったという。
バックするときは、櫂をたらいのヘリに当ててテコのように漕ぐ。前進するときは、櫂をヘリから離して操作する。自在に操れるようになるまでには、1ヶ月くらいは訓練が必要、と誇らしげに語る娘船頭さん。
こんな優雅なひと時を楽しめるなら、ベネチアでもゴンドラに乗るべきだったと後悔する。
船を降りて船頭さんにお礼を言い、別れを告げる。
陽の光をバックに自在に舟を操る姿は、凛として美しかった。
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