9月1日 三川町→羽黒山→三川町(33km)

夜半から雨は止み、明け方には雲の間からは晴れ間がのぞいている。午前中に諸用を済ませ、午後から出羽三山の一つ、羽黒山へと向かう。

出羽三山とは、東北を代表する山岳信仰の聖地、月山(1984m)・羽黒山(414m)・湯殿山(1504m)の総称。六世紀に能除仙によって開山され、現在でも多くの修験者、参拝者が訪れている。
羽黒山修験道では、羽黒山が現世(正観世音菩薩=観音浄土=現在)、月山が前世(阿弥陀如来=阿弥陀浄土=来世)、湯殿山が来世(大日如来=寂光浄土=未来)とされ、三世の浄土を表す三山を巡る修行を通し、一度死に生まれ変わること、すなわち「よみがえり」を疑似体験するという。
まず、参道入口付近にある「いでは文化記念館」で、出羽三山における山岳信仰の歴史や、山伏の文化について学ぶ。 

映像シアターでは、五穀豊穣・家内安全を祈る「花祭り」、山伏修行の「秋の峰入り」、大晦日の火祭り「松例祭」などが映し出されていた。

一時、ぱらついていた雨が運良く止んだ。喘息持ちのKが急な階段をYと同じペースで登るのは困難なので、Yは一人で羽黒山の頂上まで石段を登っていくことに。Kはバスで頂上を目指し、そこで待ち合わせて、一緒に登山道を下ることにする。
鳥居をくぐるといきなり長い下りがある。予想外の下りに戸惑っていると、右手に小さな祠があり、その奥に高さ50mはあろうかという大滝が飛沫をあげている。ここで滝行が行われるのであろう。
そのすぐ左手には、国宝・五重塔がある。東北地方最古の五重塔であり、杉木立の間に古色蒼然と無言で屹立している。ここからは登りとなる。
約400本あるという、樹齢350〜500年の杉の大木の間を縫って、石段が2500段近く伸びており、途中に3つの急坂(一の坂、二の坂、三の坂)がある。
道中、いくつかの祠や鳥居を見かけた。日枝神社・尾崎神社・厳島神社等々、それぞれ異なる霊験を有する神社だそうである。一つの祠に2つの神社名がつけられている祠があるが、それぞれ別の御神体が祀られているのだろうか。それらの一つ一つに丁寧に祈りを捧げつつ登っていく人がいるが、それが結構若い人だったりする。
あとからバスで上がってくるKよりも先に山頂に着こうと、ジョギングがわりに一段おきにスタスタと登っていく。
それにしても、歴史あるこの石段はよくできている。2つの石がカギ状、または斜めに組み合わされている石段があり、中国安徽省の名山「黄山」の天上に届くと思われる石段の職人芸を思い出した。
途中、二の坂の上がり口には茶屋があり、そこからは庄内平野が遥か眼下に望まれる。最後の急坂・三の坂を汗だくになり上がっていくと、「もうすぐですよ〜」と下り客の声援。
鳥居を過ぎると急に広々とした広場になり、立派な神社が幾つも立ち並んでいる。コースタイム60分のところ、半分の30分で山頂に着いた。
山頂には「鏡池」という小さな池がある。なんでも蒙古襲来の折、時の幕府が全国の社寺に蒙古退散祈願を命じた。ここ羽黒山で祈願すると、たちまち九頭龍王が黒雲を巻き上げ日本海に消えさり、その後蒙古の艦船の全滅が報じられた。幕府は羽黒神の霊験を感得し、釣鐘を羽黒山に寄進したという。
その釣鐘は池の隣に掲げられている。それだけであれば単なる言い伝えという感じもするが、面白いのはこの池から600枚もの大量の銅鏡が出土していること。「池中納鏡」(池に鏡を投げ入れる信仰)は全国に見られるが、一ヶ所にこれほど大量の銅鏡が奉納される例は稀有であり、この伝説の一つの裏付けと言えないこともない。
帰りはKと芭蕉の句碑や風景などを撮影したりしながら、のんびりと降りる。雨上がりの石段は苔むして滑りやすく、下りでは注意が必要だ。
Kは無料で貸し出されていた棒を頼りに、石段を斜めに歩きながら、転ばぬように 足を一歩ずつ踏みしめながら降りて行く。子供のヨチヨチ歩きを見守る父親のように、その少し手前を後ろを振り返り、振り返りしながらひたすら石段を下る。

夕方五時ごろに修行中の山伏が通るらしく、それを被写体にしようと、カメラ小僧ならぬ、カメラおじいさんやおばあさんが、参道のあちらこちらに立って待ち構えている。

今日は、今月26日から始まった出羽三山神社の山伏修行秋の峰入りの最終日ということもあるらしい。

「これから山頂から降りてくるみたいだよ」と教え合う彼らの声を背後に、KYはあと30分待てばライトアップされるという国宝五重塔を写真に収め、山伏の登場を待たずして、日が暮れないうちに下山した。
帰りにスーパーで食材を調達し、3日連続で同じ道の駅「庄内みかわ」に停泊。(KY)


キャンピングカーで日本一周

キャンピングカーで日本一周の旅に出ています。夫婦二人、各地の歴史や文化、暮らし方を学びながら旅しています。

0コメント

  • 1000 / 1000