道の駅「山川港活お海道」では、延々と「山川慕情〜」等の御当地演歌が流れている。
ここで二泊もすると、馴染みやすい旋律と歌詞なので、あらかた覚えてしまい、頭から離れない。
ふと気がつけば、夫婦二人で口ずさんでしまっているほど。
すっかり、心も身体も、この地に馴染んでしまったようだ。
ここでひとつ、山川港ヒストリーを。
九州最南端に位置する山川湾は、砂嘴によって波が入りにくく、古くから港として利用されていたという。
鎌倉時代には、南蛮貿易における重要な中継地の一つとされていた。
16世紀末に島津氏の直接支配を受け、琉球出兵、琉球貿易、砂糖輸送の拠点となり、
幕末には、モリソン号事件(非武装のアメリカ商船を砲撃)の舞台となったり、
西郷隆盛二度の流刑出港地となったりと、政治的な場面で歴史に登場している。
以上、歴史の重みを感じつつ、港の風景をカメラに収めて、いざ出発。
今日は、これから枕崎経由で海岸沿いの道を野間岬方面向かって走ることに。
開聞岳を過ぎると、あとは海岸線沿いのドライブコースとなる。
枕崎市までは国道226号経由。
このあたりは畑も多く、支柱を立てたスナップエンドウ畑があちこちに広がっている。
途中のスーパーで飲み物を買って小休止。
店の中を覗くと、なんと、先ほどのスナップエンドウは、一袋にぎっしり詰まって100円だった‼︎
枕崎は「かつおの一本釣り」で有名で、国の重要漁港・特定第三種漁港(全国に13港)に指定されていて、現在、鹿児島の漁業の中心地として栄えている。
耳取峠という小さな峠からは、太平洋とその先に、ぼんやりと開聞岳が望まれる。
少し先には、坊津(ぼうのつ)という、古代から江戸中期に渡り海上交通の要となる港がある。
古くは、奈良、平安時代の遣唐使船の寄港地。
室町時代には、倭寇(私貿易、密貿易を行う貿易商人)や遣明船の拠点。
江戸期には、薩摩藩の密貿易の拠点として栄えた。
宣教師フランシスコ・ザビエルが日本本土に最初に上陸したのも、この地である。
ここはまた、景勝地としても有名で、三代目・歌川広重が『日本地誌略圖』で「薩摩、坊ノ浦、雙剣石」に描いている。
このあたりから、「鑑真上陸の地、鑑真記念館あと◯km」の表示をたびたび目にするようになる。
鑑真が「命がけで日本に渡海し、日本に仏教の戒律を伝えた唐の高僧」であることは誰でも知っているが、彼がどこから日本に上陸したかなど、あまり知られていない。
せっかくなので、立ち寄ってみることに。
「鑑真記念館」は、鑑真の日本本土初上陸を記念して、1992年に建設された。
日本に仏教の戒律を伝えるため、度重なる苦難を乗り越え、753年の6度目の渡航に成功し、始めて辿り着いた日本本土の地、それがここ秋目浦なのだ。
ここには、鑑真像の複製のほか、渡航の様子や生涯が映像や展示品が展示され、アニメドラマで紹介されている。
鑑真が秋目浦に上陸したとされる12月20日には、毎年この記念館において「鑑真大和上の遺徳を偲ぶ集い」が開催され、鑑真ゆかりの奈良・唐招提寺の高僧も参加されるという。
喫茶コーナーでコーヒーを飲みながら、眼下の秋目浦をしばし眺める。
受付の女性と、しばし雑談。
人好きのするこの方は、野口ウィルマさんといって、フィリピン出身。
この会館では、地元の女性たちが当番制で受付を担当しているという。
釣り好きな旦那さんが、退職後に地元・坊津にUターンを希望した為、関西から鹿児島に移り住んでもう10年になる。
台風も多く、自宅の屋根が飛んでしまったり、公共交通がここまで来なかったりと、生活面では苦労も多いが、自然に恵まれ、お魚は美味しく、フィリピンでは目にしなかったような動物に出会ったりと、いろいろな体験をしてきた、と楽しげに話す。
しばし、やすらぎの時を堪能させていただいた。
記念館を出てしばらくすると、目の前に巍々とした小島が現れる。
かつて007シリーズでロケ地となった沖秋目島だ。
「ショーン・コネリー扮するボンドが、浜美枝扮するキッシー鈴木が向かった洞窟は、この島の裏側にある」との表示がある。
どちらかと言えば、先ほどの野口さんが教えてくれた、「あの島は電気がなく、今は無人島となっているが、以前は2家族が居住していた」という話の方に興味をそそられる。
続いて、野間半島を回り込んで、加世田地区まで海岸線と山道を延々と走る。
枕崎からは、直線距離では大した距離では無いのだが、リアス式海岸の沿岸部や山の中をくねくねと続く、アップダウンの激しい道を通ってきたせいか、かなり長く走った気がする。
到着したのは、「かせだ海浜温泉ゆうらく」。
ここで休憩を兼ねて、入浴。
泉質自体は、塩分が多くサラサラしており、適度に香りがつけられ、全体的に広々としていて気持ちがいい。
そのまま、この近くの大型駐車場に泊まろうかとも思ったが、灯りのない灯篭に囲まれた薄暗がりの駐車場は、夜間になると、あまり居心地の良いものではない。
ここから15分圏内に、道の駅「きんぽう木花館」があるというので、そこに移動して 宿泊することに。
周囲は農地だろうなのだろうか。
やはり、ここも暗かった……。
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